その昔、プラモの箱に描かれたロボットたちの勇姿は(中身はともあれ)組み立てる前の我々を奮い立たせるものでした。「開田裕治画集 メカニズムの軌跡」(以下、本書)はボックスアートなどで活躍するイラストレーター・開田裕治の描いたメカニックを集めた画集です。
開田裕治、もう一つの歴史
本書は「ゴジラ」や「ウルトラマン」などの怪獣を描いたイラストで有名な開田裕治の画集ですが、収録されているのは巨大ロボットなどメカニックを中心にしたものです。商業イラストレーターである開田は、映像ソフトやプラモなどのパッケージアートを主戦場としていました。
残念ながら「機動戦士ガンダム」関係の作品は収録されていませんが、「戦闘メカザブングル」「超時空要塞マクロス」などのリアルロボットから「勇者ライディーン」「スーパーロボット大戦」などのスーパーロボット、玩具の長期シリーズ「ゾイド」まで画業は多岐にわたります。
描けるだろう、バイストン・ウェル
そんな開田もメカを描くのは苦手意識があったようで、それを払拭するきっかけになったのが「聖戦士ダンバイン」であります。同作に登場するオーラバトラー(以下、AB)は、異世界バイストン・ウェルに生息する巨大生物の外殻を装甲に用いている設定で、怪獣を思わせるその姿はメカを描くハードルを下げるに十分でありました。
ファンタジーイラストに造詣のあった開田にはうってつけのモチーフであったのか、表紙になっているダンバイン以下ABプラモのボックスアートを次々手掛け、作品のイメージを余すところ無く伝えるものとなりました。開田にとって、もう一つの代表作と言って間違いないでしょう。
来たぞ、われらのイングラマン
方や(80年代の)現代から地続きの近未来を舞台にした「機動警察パトレイバー」のイラストも、開田のメカイラストの中で欠かせない作品群です。主役メカ・イングラムの足元に市民生活がうかがえる背景は怪獣映画とはまた違ったリアリティを持って作品を引き締めています。
さらに劇中のパロディ回を描いた「イングラマン」はイングラムをウルトラマン、相手レイバー・グリフォンを宇宙恐竜ゼットンになぞらえ「『ウルトラセブン』の(中略)ジャケットをそのままセルフパロディにしました」(本書180ページ)と、特撮好きの本領を発揮したものになっています。
メカを描く怪獣好き二人
本書巻末には開田裕治とメカデザイナー・出渕裕との対談が収録されています。メカを生み出すデザイナーとそれを描き起こすイラストレーターとの違いはありますが、二人の共通点は特撮好き、怪獣好きということ。それは先の2作品に関わった二人の仕事ぶりに現れています。
「映像の向こうに(中略)凄いビジュアルがあるはずということを一枚のイラストにできたら」(本書188ページ)と語る開田。出渕が「“怪獣絵師”には収まらない!」(同)と絶賛するほどのイマジネーションと技術力が内包された作品たちを本書で目にしてみてはいかがでしょうか。(Re)
「開田裕治画集 メカニズムの軌跡」開田裕治 著 池田書店 3850円(税込)