大人のための地学の教室

 この国において、地震災害は決して珍しいものではありません。しかし、その仕組みをどれほどの人が理解しているのでしょうか。「大人のための地学の教室」(以下、本書)は地球の仕組みからそれに伴う地震や火山活動を解説したものです。


地震列島に住む人なら、知っておきたい知識

 本書は「科学の伝道師」を自称する地球科学者が、教育課程で学ぶ地学の内容を改めて解説するものです。「特に東日本大震災以後、地学の必要性が認識されるようになりました」(本書005ページ)との主張の下、本書では防災・減災の意味でも大切な知識を網羅しています。

 日本列島は複数の地表プレートが寄り集まって生まれた特殊な環境で、それゆえ「地震列島」とも呼ばれます。本書ではその成り立ちから地球の構造と地震が発生するメカニズムを解説し、地震と火山活動が不可分であることが示されます。

「日本沈没」は実際に起きるのか?

 日本を舞台にしたパニックSFの代表作で映像化もされた「日本沈没」。本書ではそれに触れ、本当に起こりうるのかを「先に答えからいうと、日本列島は沈没しません」(本書154ページ)と解説するものの、現象としては実在する旨を語っています。

 ただ「ドラマ性を持たせるために速度や規模を一〇〇倍あるいは一〇〇〇倍にしている」(同157ページ)わけで、エンタメゆえ現実と違う部分があります。とはいえ同作は映像化のたびに専門家による監修を受けており、リアリティを持ってその世界観を盤石にしているわけです。

起こればデッカイ噴火山帯!

 地震列島の日本は火山列島でもあります。本書では著者が体験した伊豆大島での火山噴火について記述しており、「危ないから、このような行動をしてはいかん」(本書238ページ)と述懐するほどの危険な体験をしています。しかし、噴火による被害は直接的に生死を分けることばかりではありません。

 それは噴火で巻き上がった火山灰が空を覆い、寒冷化を引き起こすこと。それはかつての冷夏の原因となり、はるか過去にさかのぼれば「巨大噴火による大きな気候変動によって人類が大きく減ってしまった」(本書257ページ)大破滅まで引き起こした恐ろしいものであります。

地球の長いサイクルに比べたら…

 しかしそれらは地球が誕生時から続く「ひたすら冷えていっている」(本書086ページ)運動の一環であり、46億年の長きにわたる歴史からすれば人類の営みなど一刹那の現象でしかありません。それでも人間は地球の観測と研究によってその仕組みとサイクルを解き明かそうとしてきました。

 その結果、日本列島に限らずこれから大災害が起こり得る可能性が現実味を帯びてきました。「多くの人は他人事のように思っている。それをいま、我が事にしてもらうのが本書の目的の一つ」(同341ページ)であり、その助けとなる知識を持つことは、これからを生きるために必要なのです。

「大人のための地学の教室」鎌田浩毅 著 ダイヤモンド社 1980円

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