今でこそテレビ番組をスマホで視聴するのは当たり前になりましたが、30年以上昔にテレビが見られる携帯ゲーム機があったのをご存知でしょうか。「ゲームギア大全」(以下、本書)はセガ唯一の携帯型ゲーム機、ゲームギアに関する情報を盛り込んだ一冊です。
セガが満を持して発売した携帯型ゲーム機
本書は1990年に発売されたセガの携帯ゲーム機・ゲームギア(以下、GG)のハード・ソフトを紹介する一冊です。カラー画面を売りにし、任天堂の携帯ゲーム機・ゲームボーイと棲み分けしながら96年までその使命を全うしたGG。本書は2020年に発売された「ゲームギアミクロ」と合わせてそのすべてを掲載しています。
カラー液晶の残像やバッテリー消耗の早さなど弱点もあったGGではありましたが、「販売台数は国内では約180万台、世界累計では約1400万台」(本書005ページ)のシェアを獲得し、セガハードの中でも成功例として携帯型ゲーム機の一時代を築いたのです。
メガドラの弟分として、独自路線を突き進む
GGのソフトの特徴としては、同時期にメガドラが発売されていることもあってか「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」や「ベア・ナックル」などメガドラ用のゲームをアレンジして移植しているものが目立ちます。もちろんハードの性能差があったものの、それを感じさせないGGならではの名移植が見られるのは好ポイント。
また「ペンゴ」「コラムス」「ぷよぷよ」などセガ製パズルゲームが手軽に楽しめるのも強みであり、さらに
- ファミコンでは「高橋名人の冒険島」だった「ワンダーボーイ」
- PCエンジンでは「アドベンチャーアイランド」の名称だった「モンスターワールドⅡ」
など他機種ではアレンジされていたゲームがオリジナル仕様で遊べたのです。ソフト数を潤沢にできたのはGGの性能がマスターシステムと同等だったためであり、海外でマスターシステム用に開発されたゲームの移植も加わり、メガドラやサターンとはまた違ったラインナップを形成していきました。
5色揃って、ゲームギア!
GGは携帯機としての可能性を追求したハードであり、(先も述べた通り)テレビチューナーを付属させたりカーバッテリーから電源を供給するためのケーブル、弱点を補う拡大鏡やバッテリーパックなど付属品は多岐にわたります。本書でもそのほとんどが網羅されており、当時の力の入れようがうかがえます。
そしてGGはセガハードの中でもバリエーションに富みます。色違いはもちろん、キャリングケースに入ったホワイトGGやソフト同梱モデル、後期「キッズギア」と名を変えたマイナーチェンジモデルまで、本書では数多いそれらを紹介、さらにゲームギアミクロもバリエーションが多く、それらがいかに旧作を意識して作られたかがわかります。
裏技を紹介して、誰がやる?
本書では「発売中止ゲーム図鑑」シリーズの著者らしく、発売中止GGソフトの話題や当時の広告なども紹介しております。ソフト解説の下に一言添えられているのも特徴で「タイトルロゴに書かれた『AX』の文字だが、(中略)『仮面ライダーBLACK RX』のレタリングと酷似している」(本書058ページ)など、独自のツッコミも見られます。
さらに(現在掲載する意義に疑問を感じますが)GGソフトの裏技も紹介、当時を知る人ならば懐かしさを感じるかもしれません。「身体と人生の一部とも言うべきハード」(同237ページ)の言葉通りGGが著者にとって思い入れ深いゲームハードであったからか、その思い入れが本書を通じて感じられるようです。
「ゲームギア大全」鯨武長之助 著 三才ブックス 2640円(税込)