スマホゲームやダウンロード版など、もはやテレビゲームはハードに依存するものではなくなりました。それでもかつてのゲーム機が放った未来志向の輝きは忘れがたいものがあります。「ゲームコンソール2.0」(以下、本書)はそんなゲーム機たちの写真集です。

(本記事におけるゲーム機名称の表記は基本的に英語表記ですが、日本のゲーム機はかな表記になる旨、ご了承の程を)
半世紀にわたる歴史のゲーム機図鑑
本書は、これまでに世界各国で販売された家庭用ゲーム機たちの写真集です。ハードによってはその内部までも写し、世界初の家庭用ゲーム機「Magnavox odyssey」から任天堂スイッチやPS5までの最新ハードまで、メジャー、マイナー問わず集められています。
1972年から始まるゲーム機の歴史は、テレビゲーム「Pong」を再現することから始まります。日本でも任天堂をはじめ各社が「Pong」が遊べるゲーム機を作り出し、70年代を飾りました。本書では技術革新ごとにゲーム機を世代分けしており、その歴史が俯瞰できます。
日本版と海外版、どう違う?
初期のゲーム機はアメリカ製がほとんどでしたが、ファミコンのヒット以降、日本製のゲーム機が世界に名を馳せることになります。本書ではファミコンとNES、メガドライブとGenesisのように日本版と海外版を掲載しており、名称のみならずデザインなどの違いがわかります。
中には日本で「ぴゅう太」として発売されたものが「Tutor」の名で海外展開されていたり、逆に「Vectrex」は「光速船」の名で輸入販売されていたなど、国際間でゲーム機の相互展開が見られますが、過去の事ゆえかその記述に不完全な部分があるようです。
アタリショックとファミコンのロボット
本書では80年代前半に起こった「アメリカで最も勢いのあった産業が荒廃するまでにわずか数か月しかかからなかった」(本書75ページ)家庭用ゲーム機市場の衰退、いわゆる「アタリショック」についての概要がまとめられています。日本ではメジャーと言い難いこの事件は、ゲーム機の歴史で重要なものでした。
その隙を縫うように海外進出を図ったのがファミコンであります。そのために導入したのがR.O.B.(日本版ではロボット)で、「子供たちにゲーム機をおもちゃのように見せようとした」(同94ページ)戦略を取りました。日本では存在意義が不明だったロボットセットが、海外で重要な役割を果たしていたのは意外でもあります。
失われしゲーム機たちに光を
膨大な数のゲーム機を収録した本書でありますが、巻末に収録できなかったゲーム機をリスト化しています。その中にはPC-9801やX68000など日本製パソコンの名も見られ、入手の難しさとそのコストを考えると苦労が忍ばれます。願わくばバージョン3でラインナップに入ることを祈らずにいられませんが…
もはやスマホでできるテレビゲームですが、そこに至るまでには家庭のテレビにそれを持ち込もうとした幾多のメーカーによる悪戦苦闘がありました。それらゲーム機の勇姿は今なお色褪せることがありません。本書でその痕跡を感じてもらえば幸いです。(Re)
「ゲームコンソール2.0」Evan Amos 著 フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ 訳 オーム社 3960円(税込)