ネット上でオンラインゲームを介しての恋愛も珍しくない今日このごろ、90年代にそれを見越したかのような漫画があったのをご存知でしょうか。「BRAKE-AGE(全10巻)」(以下、本書)は(当時の)近未来を舞台にした青春ラブコメゲームバトルロボット漫画です。
(本記事は94年から刊行されたアスキー版単行本と99年刊行のオフィシャルガイドブックを参考にしている旨、ご了承の程を)
青春ラブコメゲームバトルロボット漫画の金字塔?
本書は1992年の読み切りから始まり、月刊誌で8年強かけて連載された漫画の電子書籍版です。単行本ではモノクロだった連載時のカラーページも再現された完全版として復刻され、約30年の時を経て新たに読者の目に止まることになりました。
バーチャルパペット(以下、VP)と呼ばれるロボットを操縦して対戦するアーケードゲーム「デンジャープラネット」(以下、DP)が人気となった世界。プレイヤーの高専生・仁村桐生(きりお)は、ひょんなことからゲーム内で無敵のVP「ベンケイ」のプレイヤーが美少女・高原彩理であることを知り、自作のVP「九郎」を引っ提げ、彩理とのお付き合いを賭けて「ベンケイ」に立ち向かう…というのがあらすじであります。
ドイツ語でデレないヒロインのエーディトさん
そんな本作のヒロイン・彩理(ドイツ名・エーディト)はドイツ人の親を持つ才色兼備な女子高生。DP関係ソフトメーカーの令嬢であり、VPの操縦もトップクラスな彼女は、(ツンデレという言葉が生まれる以前の)ツンデレキャラであります。そんな彼女と桐生の付かず離れずな関係性が本作の魅力の一つといえるでしょう。
赤毛である桐生自身も英語に長け、彩理の友人にも帰化した人物がいたりと(漫画ならではの理想化かもしれませんが)本書のキャラクターには国際化を意識した部分が見て取れます。また、桐生が所属する同好会の(いつも着ぐるみを着用している)会長など、インパクトあるキャラが多いのも特徴です。
従来の枠にとらわれないメカを目指して
本書に登場するVPは、ゲーム内では巨大ロボットでもあくまでプログラムであり、技術があればカスタマイズも可能な設定となっています。主役機の「九郎」は頭部こそいわゆるリアルロボットの見た目ではありますが、ボディは軽量化のためフレームがむき出しのデザインで、物語が進むに連れバージョンアップを重ねていきます。
「ベンケイ」にしても重装備の多脚型VPであり、当時のリアルロボットを経たメカデザインの中でも異彩を放っています。担当したメカデザイナーによれば、いかに従来の枠にとらわれないデザインをするかに注力していたそうで、その苦労がうかがえます。(作画には相当苦労したようで…)
桐生と彩理の恋愛が縦糸とするならば、「ベンケイ」の謎から始まったDPに関わるソフトメーカー同士のパワーゲームが横糸となって本作のストーリーが紡がれていきます。
あの頃夢見た機械仕掛けの未来へ
テレビゲームが盛り上がっていた90年代前半から連載された本作、作中には当時のゲームネタが散りばめられ、著者のトレードマークであるデフォルメキャラが登場するほどにコミカルな部分も多いのです。ただ現在の目で見ると電子版新聞、コクピットのような筐体を用いたアーケードゲーム、ゲームを実況するCGで作られたAIキャラクターなど、実現した(もしくはしつつある)技術を予見していたような描写が見られるのが興味深いところ。
オンラインゲームを舞台とした作品も当たり前になった昨今、「ジョジョの奇妙な冒険」「キン肉マン」などのように、現在アニメ化しても遜色のないポテンシャルを秘めた本作(OVA?何のことかな)、これを機に再評価してもらいたいものです。
「BRAKE-AGE(全10巻)」馬頭ちーめい+STUDIOねむ 著 ナンバーナイン (1〜4巻無料、5〜7巻385円、8〜10巻550円、税込)