NHKEテレの番組「0655」で年末年始に放送される干支ソング。そのうちの一つ「はしれ!ウマダウマジロウ」では、ウマの漢字の成り立ちが歌われていました。「いきもの漢字事典」(以下、本書)は数々の動物についてその生態と漢字の成り立ちをまとめた一冊です。

動物の漢字、どうしてこうなった?
本書は動物の漢字と(「新装版 仮面ライダー昆虫記」の著者監修による)生態を解説するものです。イヌ、ネコのように身近なもの、タヌキやキツネ、カワウソなど野生動物、ナマケモノやパンダなどの珍獣まで、漢字で表記される動物の人となり(?)がわかります。
その動物自らの解説で「どこが犬やねん!」(本書011ページ)と言いたくなるような原型の文字から現在の漢字に至るまでの過程とその元となった生態が掲載され、最後に漢字の画数、音読み、訓読み、動物のことわざをまとめ、少し緩めのイラストを挿絵にしています。
干支の動物、大集合(龍は除く)
さて、先の干支ソングのように本書ではネズミ、ウシ、トラなど干支の動物も扱っています(龍は除く)。十二支のエピソードは「通りがかったトリが間に入ってくれなかったらたぶんずっとケンカしていたと思うぜ」(本書066ページ)と「犬猿の仲」も合わせて、サルが解説する形で示されます。
とはいえ、ヘビが語る「昔は、ヘビをはじめとした小さな生き物のことを全部まとめて『虫』と呼んでいた」(同043ページ)やトラが語る「オレのおでこの模様が『王』って字に見えないか?(中略)昔の人間は『この動物こそ、自然界の王にちがいない!』と思ったそうなんだ」(同097ページ)と、昔のこととはいえ人間による解釈の適当さはさすがにツッコミを入れたくもなるでしょう。
あっ!キリンもゾウも漢字になった!
「漢字が生まれた中国にも昔はたくさんゾウがいたもんじゃ」(本書039ページ)と、漢字で表される動物は中国で生息していたものや、カバやモグラのように日本での再解釈で生まれたもの、伝説上の動物の字を当てはめたものなどに分けられ、最後の代表格はキリンです。
「せっかく日本に珍しい動物が来るなら、伝説の聖獣の名前で宣伝しようじゃないか!」(同140ページ)とのアイデアで、本来は聖獣だった「麒麟」の字を当てはめたがゆえ、日本ではキリンとして名が通った経緯があります。またオランウータンには「猩猩」(しょうじょう)の字が付けられた一方、バクも同様な成り立ちですが「(想像上の)バク=パンダ」(同106ページ)だそうで、実際のバクにしてみれば迷惑な話かもしれません。
支え合うから「人」ではない?
本書の最後を飾るのは「人」。「一人のヒトが横向きに立っている姿からできたもの」(本書151ページ)であり、人間が支え合っているのではないのです。さらに「生物のトップに立っているかのようにふるまうのはごうまんなことだ」(同152ページ)との言葉もあり、耳が痛い限りです。
本書は漢字に関するコラムを挟んだりと基本的に小学生向けの本ですが「獺」「土竜」「樹懶」など意外に知らない動物の漢字が分かり、その生態も併記しているのは類がなく、大人も充分楽しめる内容といえるでしょう。(Re)
「いきもの漢字事典」粟生こずえ 著 稲垣栄洋 監修 文響社 1628円(税込)