フィギュアの教科書 原型入門編

 その昔ガレージキットが生まれたとき、主流となったのはアニメや特撮のキャラクターを立体化したフィギュアでした。「フィギュアの教科書 原型入門編」(以下、本書)はそんな時代から連綿と続くフィギュア原型の作り方を解説した一冊です。

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かつて、フィギュアはこう作られていた

 本書はフィギュアの作り方を初心者にもわかりやすく解説したものです。かつての自作フィギュアはガレージキットとしてレジンで複製するのが一般的でした。そのためには原型を制作せねばならず、素材は石粉粘土やスカルピー、パテなどを盛り付けて形づくる方法が取られたのです。

 今でこそ3Dプリンターによるデジタルモデリングが席巻しつつある中、手作業でのフィギュア制作は自己表現として一つの方法であることに変わりはありません。本書では著者なりにその工程をシステマティックに落とし込み、入門書にふさわしい内容になっています。

エポキシパテをこねて作るんだ!

 本書では、素材としてエポキシパテを用いてフィギュアを制作していきます。焼いて固めるスカルピーや水分蒸発によるひけを起こす石粉粘土に比べても、化学変化で硬化するまでにある程度造形を行えるエポキシパテは初心者向けであるとの著者なりの判断でしょう。

 そんなエポキシパテに慣れるために、まずはゆるキャラのようなシンプルキャラの造形を行い、段階を踏むかたちで美少女キャラクターのフィギュアを制作していきます。これは「途中で挫折せずにひとつでも完成に辿り着くことで、原型を作ることの悦楽を味わうため」(本書015ページ)との配慮であります。

お面顔にならないために その1

 「人形は顔が命」と言われていたのもはるか昔、これはリアルタッチでもアニメ調でも変わりありません。本書ではアニメイラスト調の造形を目指して制作していきますが、2次元のキャラを立体化するのは思ったより難しいのです。それは本書において顔の造形に多くのページを割いているところに現れています。

 「平たい板に目鼻を貼り付ける、という構成にはしないで」(本書056ページ)作らなければならない分、立体としての顔を把握していないとアニメ調の造形はままなりません。幸い著者によるイラストで(失敗例含め)造形法を解説しており、美術解剖学を学ばなくてもある程度の造形ができるようになるでしょう。

デジタルモデリング夜明け前のフィギュア

 本書が刊行されたのが2013年。「フィギュア原型のデジタル化は2013年現在、混沌とした過渡期とも言える」(本書158ページ)と、デジタルモデリングという選択肢が浮上し始めた時期であります。「無限に広がる新大陸が現れたのです!」(同088ページ)の言葉通り、まだまだ新規の技術だったのは否めません。

 それから10年以上たち、デジタルモデリングは(発展途上とはいえ)メジャーな造形方法になりました。本書の内容はもはや時代遅れになってしまったように思えますが、趣味としての造形は連綿と続くものであり、その指針として本書の存在は十分使用に足るものでしょう。(Re)

「フィギュアの教科書 原型入門編」模型の王国 著 新紀元社 2090円(税込)

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