大張正己画集 OBARISM

 「勇気爆発バーンブレイバーン」(以下、「ブレイバーン」)など、数々のロボットアニメでケレン味の効いた巨大ロボットを描いてきたアニメーター、大張正己。その画業を集めたのが「大張正己画集 OBARISM」(以下、本書)であります。

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大張正己画集 OBARISM
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日本一のロボアニメーター

 本書は「破邪大星ダンガイオー」「超獣機神ダンクーガ」など、80年代から今に至るロボットアニメにおいて強烈な印象を残す作画で人気を博したアニメーター・大張正己の画集、その三冊目です。今回はテーマごとにまとめられ、仕事の多彩さを俯瞰できる構成になっています。

 その設定画を大幅に超えるアレンジを加えた作画は「バリメカ」「バリってる」などの呼び名でファンを増やし、90年代のいわゆる「勇者シリーズ」で描かれた、大きくパースのついた剣を構えるポーズは以降のロボットアニメ以外でもパロディとして使われるほどの定番演出となりました。

バリグナーだ、当たると痛ぇぞ!

 そんな大張の名を知らしめたのは1987年放送のTVアニメ「機甲戦記ドラグナー」でありましょう。大張作画によるオープニングアニメでドラグナーが動くさまは視聴者に多大なインパクトを与え、後に「バリグナー」と呼ばれるほど独立したメカとして認識されます。本書では当時の描き下ろしと近年描かれたドラグナーが掲載されており、若さに任せた勢いのある作画と時を経てスタイルを確立した作画の違いを感じ取れるでしょう。

 そして2016年に放送された「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」第2期において、ガンダムバルバトスルプスが繰り広げる「機動戦士ガンダム」シリーズ中でも屈指の戦闘シーンを担当、その迫力ある作画は変わらずのクオリティでありました。

立体でバリってみるのは難しい

 さて、先のバリグナーは人気があったものの、80年代当時その立体化は無きに等しい状況でした。本書ではその後行われたバリメカの立体化についても触れられています。30年以上を経て大張本人からの監修を受け、数々のロボットが立体化されるようになりました。

 「メカでありながら『人間』のフォルムを落とし込む」(本書50ページ)大張のアレンジは、人気がある反面立体に落とし込むには難しい代物でありました。バリメカを熟知し造形できる人々のお陰で、近年ようやく本書で紹介されるような立体物を(バリグナーの模型化が実現されるほどに)入手できる時代になった、ともいえるでしょう。

大張に、無茶な仕事を押し付けるの!

 本書出版以降も、先の「ブレイバーン」を監督するなど多岐にわたる仕事をこなす著者。本書後半はそれを象徴するような作品を紹介し、琉球銀行のキャラクター・りゅうぎんロボのイラストや「自分的には時間のない中で最大限の仕事をした」(本書35ページ)クソアニメ「ポプテピピック」など枠を超えた仕事ぶりが垣間見られます。

 40年の長きにわたりそのスタイルを維持しつつ、多くの人に影響を与えた大張。その唯一無二の表現には勢いだけでない気配りが込められ、タイトル通り「大張イズム」にあふれたものを生み出していきました。それは本書の中にも息づいています。(Re)

「大張正己画集 OBARISM」大張正己 著 ホビージャパン 4950円(税込)

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