ネットがなかった時代、ゲームの攻略には専門誌の記事が欠かせませんでした。「チャレンジ!パソコンアドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲーム SP1」(以下、本書)は単行本化された80年代当時の雑誌連載記事の復刻版です。
メーカーとユーザーの知恵比べに一石を投じる
本書はパソコン雑誌「マイコンBASICマガジン」で連載されたパソコンゲーム攻略記事の単行本、その復刻版です。とはいえ、シリーズ化された中から抜粋されたものですが「できるかぎり原本の内容を維持するように努めました」(本書4ページ)と当時の雰囲気を感じられるものになっています。
先に述べた通り80年代のゲーム、特にパソコンのゲームは攻略情報に乏しく、本書のような攻略記事は貴重でありました。あくまでもヒントにとどめているとはいえ、RPGのマップやアイテム情報などが記載された本書はゲームクリアに欠かせない存在だったといえるでしょう。
ADVもマッピングが大事
パソコンゲーム黎明期にはRPGと並んで主流だったアドベンチャーゲーム(以下、ADV)。反射神経を必要としない反面クリアするための難易度は高く、当時は動詞と名詞を組み合わせたコマンドを入力してゲームを進める方式が一般的でありました。もちろん本書は直接コマンドを掲載しているわけではありません。
本書に収録されている「惑星メフィウス」シリーズや「ウィル」などADVはストーリー内で同じ場面をさまよう事になりかねないため、RPGのようにマッピングが必要になります。本書でもゲーム内のマッピングがなされているタイトルではそれだけでもクリアの助けになるのです。
RPGは、面倒くさいか簡単か
本書のオリジナルが出版された86年には「ドラゴンクエスト」も数あるRPGの一つでしかありませんでした。同時期にファミコン版が発売された「ハイドライド」や「ザナドゥ」など、アクション要素を組み合わせたARPGが当時のトレンドであり、本書で扱われている作品の大半を占めます。
アクションゲームに近いならば簡単かと思えばさにあらず。特に「ザナドゥ」は「200以上のパラメータ」(本書115ページ)など面倒な要素が多く、それゆえやりこみ要素の多さで人気となった作品でもあります。本書にはそれを解消する裏ワザも掲載しており、パソコンゲームならではの方法を使っていたりします。
気恥ずかしいくらいの熱気と情熱
この当時パソコンゲームそのものが珍しかったこともあり、本書では「実践アドベンチャーゲーム講座」(本書5ページ)としてADVがどういうゲームなのか、マッピングの必要性など初心者向けに解説しており、さらにメーカーに取材しゲームができるまでのレポートも掲載しています。
ただ、初心者向けゆえかキャラクター同士の掛け合いが基本フォーマットとなっており、現在見ると気恥ずかしい部分が見受けられます。それでも新しいメディアを広めようとするパソコンゲーム黎明期特有の情熱は感じられるでしょう。以降の攻略本や攻略サイトの礎になった本書、本来の用途よりもその時代感を知るための資料と捉えるべきかもしれません。
「チャレンジ!パソコンアドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲーム SP1」山下章 著 電波新聞社 5500円(税込)