増補新版 スーパーファミコンパーフェクトカタログ

 2025年現在、いわゆるレトロゲームのイメージは90年代、特にスーパーファミコンの画面が想起されるかもしれません。「増補新版 スーパーファミコンパーフェクトカタログ」(以下、本書)は90年代前半を代表する家庭用ゲーム機に関する一冊です。


「スーパー」な「ファミコン」に徹する

 本書は1990年に発売された家庭用ゲーム機・スーパーファミコン(以下、スーファミ)のソフトとハードを網羅した一冊で、おなじみ改訂新版ならではの海外版ソフト情報を追加してボリュームアップしたものになっています。PCエンジンメガドライブ(以下、メガドラ)に遅れて発売されたスーファミは、90年代前半ゲーム市場の一角を占めるゲーム機でありました。

 他のゲーム機と違い、ファミコンの正当な後継機として作られたスーファミ。向上した性能のもと、これまでの資産を活かす形で「スーパーメトロイド」「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」など続編を発売する一方、3D表示の「スターフォックス」、名作のスピンオフ「スーパーマリオカート」など新たな遊びの形を提案していきました。

剣と魔法と拳の時代

 ファミコン時代に大ヒットした「ドラゴンクエストⅢ」を受け「ファイナルファンタジーⅣ」「真・女神転生」など、スーファミでもRPGが主流を占めました。「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」シリーズを独占リリースしたスーファミはその知名度でさらなる地歩を固めたのです。

 そして人気アーケードゲーム「ストリートファイターII」(以下、「ストⅡ」)の移植版は遜色のない出来で大ヒット、格闘ゲームブームの火付け役として歴史に名を残しました。移植先にスーファミが選ばれたのは、コントローラーに6つのボタンが標準装備されていた部分が大きいと思われます。

キャラ差し替えか、そのまま移植するか

 この頃のゲーム機はサードパーティ制を敷いているのがほとんどで、それゆえ先の「ストⅡ」のようにPCエンジンやメガドラにも同じ移植タイトルが見られます。中には「ぽっぷるメイル」のように、ハードによって中身が違うゲームもありましたが、大半の移植作に内容差はほとんどありませんでした。

 これは海外版でも同じで、ファミコン時代に比べても日本版をほぼそのまま(海外版SNES用)に移植したタイトルが多くなります。例えば「らんま1/2」ではキャラ差し替えが行われていたものの、続編では日本版に沿ったものになりました。逆に日本版「ウルトラマン」が「ウルトラマンG」に、海外版「ジェットソン」が「妖怪バスター・ルカの大冒険」になったように、キャラ差し替えを行った作品は珍しいくらいです。

老ゲーム機は死なず、ただ消え去るのみ

 (国内では)売上でメガドラに差をつけたスーファミ。「CPUの処理速度は他機種に比べて一番遅い」(本書044ページ)ハンデを負いながらも10年の長きにわたって現役だった稀有なゲーム機でもあります。しかしそれは好条件が揃っていたからだけではなく、「後継機として満を持して発売したはずのNINTENDO64の不振」(同009ページ)も影響していたのです。

 衛星放送でゲームを配信する「サテラビュー」やコンビニでゲーム書き換えを行う「ニンテンドウパワー」も成功したとはいえない中、スーファミは結果的に家庭用テレビゲームのスタンダードを確立しました。当時の名作が以降のゲームに与えた影響は計り知れないものがあります。

「増補新版 スーパーファミコンパーフェクトカタログ」前田尋之 監修 ジーウォーク 3960円(税込)

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