猫は、犬と並んで人間のペットとして生きてきた代表的な動物であります。日常生活の中でその普遍的な姿を捉えるのは至難のわざかもしれません。「絵を描くためのネコの写真集」(以下、本書)は猫の自然に近い生態をとらえた写真集です。
のびのびしたネコの写真集
本書は「絵を描くためのキツネ・タヌキ・オオカミの写真集」と同じく、作画の参考資料となる猫の写真集です。本書に映る猫のほとんどは「桜耳」と呼ばれる耳の先が欠けている個体で、それは 「TNR」と呼ばれる活動の一環として、避妊処置を施し特定の地域で放し飼いされている「地域猫」の証なのです。
室内飼いよりも過酷な反面、道路や建物の敷地、樹上や塀の上を歩くなど自然に近い環境でのびのびと生きる姿を捉えた写真は、単に可愛らしいだけではない猫本来の生き様を見せてくれます。それゆえ、ベストショットを捉えた参考資料として有用といえるでしょう。
猫の柄はさまざま
本書の最初では、猫の柄を大まかに種類分けして解説しています。縞模様(タビー)、三毛や二色柄(キャリコ、バイカラー)、単色(ソリッド)などをイラスト付きで詳細に提示しており、目や鼻、肉球までもカラーバリエーションがあるのがわかります。
そんなわけで写真もタビー、キャリコ&バイカラー、ソリッドの柄に分けて掲載、その中でもキジトラと茶トラが混じったムギワラ、「サビの中でも黒よりオレンジが多い」(本書7ページ)べっ甲、柄の色が薄いクリームなどレアな柄の個体も収められています。
人間が入っているのか?なポーズ
さて、柄は違えど同じ猫である以上その動きは(個体差はあるにせよ)ほぼ同じであります。伸びをする、寝っ転がる、香箱座りなど、本書のどこを開いても猫の魅力的なポーズが見られ、中には人間が入っているのではないかと思わせるような身振りすら見られます。
いわゆる「スコ座り」と呼ばれる人間のように腰を下ろした姿や(彫像で有名になった)路肩に肘かけて寝そべる姿など、人間が感情移入しやすいポーズも少なからずあり、野生はどこへ行ったのかと思う反面、その可愛らしさにほっこりとしてしまいます。
人間とネコの生き様を考える
先に述べた通り、本書の猫たちは室内飼いされているわけではありません。多頭飼育崩壊など、人間の管理不行き届きで保護するどころか猫にとって不幸になる状況がある中で「ベストではないけれど、なんとかこの一代限りの性をまっとうしてほしい」(本書160ページ)猫たちの生き様がここにあります。
ともあれ、首輪をつけ飼い猫としてちょこんと座る三毛猫やちょっぴり舌を出す黒猫など、可愛らしい姿が収められているのも本書の強み。もちろん無断転載を禁じているので、その愛おしさを写すようになにか作品を制作してはいかがでしょうか。
「絵を描くためのネコの写真集」武田晶 撮影 ウエイド 編 マール社 2420円(税込)