ゴジラVS自衛隊 アニメの戦争論

 「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」など、実際の戦争をモチーフにした作品は少なからずありますが、それらはどれだけ現実的なのでしょうか。「ゴジラVS自衛隊 アニメの戦争論」(以下、本書)は実際の軍事的観点からアニメや特撮を語った一冊です。

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アニメで描かれた戦争は、どこまでリアルか

 本書は、「防衛研究所の幹部と朝日新聞の記者と東大の研究者、あと『職業はドイツ人』とその夫」(本書308ページ)による対談集です。語り手に軍事オタクの割合が高いことから、内容はアニメや特撮を題材にしながら軍事的観点からの話がメインです。

 本書では先の2作品のほか「機動警察パトレイバー」「風の谷のナウシカ」などのミリタリー描写に言及していきますが「リアルだけで押していくと、どんどんつまんなくなっていく」(同34ページ)エンタメ作品である前提は押えつつ、その中での「リアル」を語っていきます。

ゴジラ映画と戦争のメタファー

 本書ではタイトル通り「ゴジラ」シリーズを語っていますが、主に取り扱っているのは「シン・ゴジラ」と「ゴジラー1.0」であります。2作に共通しているのは兵器周りのリアリティであり、語り手に「零戦の脚だけで大興奮」(本書73ページ)と言わしめるこだわりが見られます。

 ゴジラが核兵器の象徴であるのは一般的な見方。「ゴジラー1.0」は「(登場人物が)戦争の再来みたいなゴジラともう一回戦うことで、『戦争』に決着をつける」(同86ページ)テーマが内包されており、本書では戦後80年の現在でなければ描けなかった作品と定義しています。

アスカ、ドイツ語喋れないのか?

 兵器にこだわりのある作品といえば「新世紀エヴァンゲリオン」は外せません。旧ソ連の兵器を意識したメカが登場するなど、本書の語り手が指摘するほどのマニアックな作りの作品ですが、本書で注目されたのは登場キャラの一人、惣流・アスカ・ラングレーについて。

 ドイツからの帰国子女という設定のアスカですが、(語り手の一人、マライによる)ドイツ人からの指摘により「じつはアスカはドイツ語そんなにしゃべれなかったのではないか?」(本書147ページ)という解釈が生まれてきます。日本のアニメで外国語を用いることに限界があるのは仕方のない部分がありますが、それを逆手に取ってこういう解釈が出てくるのはオタクならではの知的遊戯でありましょう。

ドローン戦争は実現するのか

 そこから日本人が抱くドイツ像と実際の姿が語られ、同様に崩壊後の情報によって旧ソ連のイメージも日本人が抱くものとは随分と違っていたことが見えてきます。他国から見たお国柄というものはイメージに頼る部分が大きいのでしょう。そして巻末では実際の国際事情を踏まえ、これからの戦争像を探っていきます。

 「ドローン戦争になったらドローン対ドローンになるという保証はまったくない」(本書311ページ)という主張が生まれるように、「機動戦士ガンダムF91」で登場した対人兵器・バグのような運用がドローンでなされている現在、「機動武闘伝Gガンダム」のような戦争形態は成立しないのかもしれません。

「ゴジラVS自衛隊 アニメの戦争論」小泉悠 高橋杉雄 大田啓之 マライ・メントライン 著 文春新書 1243円(税込)

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